オリッシーは、古典舞踊の代表的なものの一つで、古くから踊られていた伝統舞踊です。東インド・オディッシャ州のヒンドゥー教の聖地プリーという町にあるジャガンナータ寺院で、マハリと呼ばれる巫女達が、十二世紀ジャヤ・デーヴァという詩人の代表作クリシュナ神とラーダ-の愛を綴った”ギータ・ゴーヴィンダ”を朝・夕にわたり演じ、踊りや歌を奉納したことが始まりとされています。
全宇宙の神ジャガンナータ神は、ヴィシュヌ神の化身の一つとされ、クリシュナ神であると言われています。インドでは、踊りや音楽は、神へのバクティ、献身的な愛なしには存在しないと言われており、現在でもその精神は受け継がれています。西洋ダンスと違い、踊りが神との意志交流を図る唯一の手段だったため、一挙手一動作に意味があり、わずかな目の動きにも魂が込められています。
ODC不定期ダンス鑑賞会は、至近距離ですからダンサーの息遣いから顔の表情手指足捌きなどとっても細かい技術をガン見して頂けます。そのためダンサーはホール以上にかなりの緊張感を持って挑まないとなりません。ストレスマックスな課題は、いつも私や生徒さん達にとって更なる成長に繋がる貴重な経験となるのです。
そして単なるビューティーや物珍しい踊りだけではない理論がいっぱい詰まったテクニック満載な世界一難しいレベルの踊りインド古典舞踊を通して、演者と観客双方にfeel something!グッとくる何かを感じて頂けるような不定期ダンス鑑賞会になればと思います。
★アビナヤの面白さ★
アビナヤは、感情を顔に出す習慣がない私達日本人にとって、特に難しい分野の踊りだと思います。インド古典舞踊は、基本ソロで踊るよう振付されており、インド神話や言葉の意味を理解し、歌とリズムに合わせて、様々に変化する感情表現を目や手の動き、顔の表情、身振りによって表現し、瞬時に1人何役も演じ分ける技術が必要とされます。デュエットやグループ構成なら外国人の私達でも物語がイメージしやすく華やかで楽しめますね。
★オリッシーのプチ理論★
インド古典舞踊に欠かせない有名な演劇書「ナーティヤ・シャストラ」や「アビナヤ・ダルパナ」ODISSIのテキスト「アビナヤ・チャンドリカ」等の文献から沢山の事を学べます。
その文献の中に舞踊・演劇に欠く事の出来ない理論”四種類のアビナヤ”があります。
アーンギカ(身体によるもの)
ヴァーチカ(声によるもの)
アーハリヤ(装飾~化粧、衣装などによるもの)
サートヴィカ(表現等によるもの、心理的表現)
の中にある3番目のアーハリヤ。衣装や化粧、装飾等によって表現する方法。衣装は見た目の美しさだけでなく、演じる役柄によって身につける装飾、衣装が違がったり、メイクやカツラを使う事で出てきただけで観客が誰を演じていいるのかすぐわかるビジュアルアートの役目にもなるのです。
そしてまたインドでは芸能は人が神々や英雄たちと交わるためのものと考えられていたため踊り手の入念な化粧と手の込んだ装身具は神を迎える準備として自らが非日常な存在へと姿を変えて行く過程で必要不可欠な要素になっています。
現在日本において踊りの舞台鑑賞はもちろん踊り手の技量や表現力、舞台構成・内容・テーマ性などがとても大切ですが、場の持つ雰囲気や(お寺や野外、会場の大きさでも違う)照明や音響等の空間演出も舞台をより一層効果的に見せる方法です。
そして同じく踊り手が身につける衣装や装飾品等もまた舞台に彩りや華やかさを添える必要不可欠なものなのです。上記四種類のアビナヤのように衣装には役柄によって決まった衣装の色があったり、出て来ただけで誰を演じているかわかるそんな事を考えながら見るのも楽しくありませんか?
例えば、ダンスドラマの場合、黄色の衣をまとったクリシュナ神がゴーピーと楽しく戯れている様子(クリシュナ神は黄色い衣をまとい空のように青い肌をしていると叙事詩ギータ・ゴーヴェンダの中で歌われています。)
黄色い衣装に孔雀の羽がついた冠、横笛を吹く登場人物が出てきたらそれはクリシュナ神と一目でわかりますね。